どんぐりはどこへ
今年はクマの出没情報が早くから聞かれますが、クマは本来臆病で、夜行性であり、人家の近くやハイキングなどでもめったに出会うことはありません。私も2回しか会ったことはありません。
今年の秋は木の実などが不作なのでしょうか。
クマは雑食性で、木の実や芽・果実またサワガニや昆虫など食べますし、もちろん蜂蜜は大好物です。また小動物や動物の死骸も食べるそうです。
北海道で夏に調査を手伝ったときに、斜里岳の中腹ではヒグマがコケモモをムシャムシャ食べていましたが、ヒグマの研究者からは、ヒグマはイワナやサケなどの魚が大好きで秋には渓流から河口・海岸線で魚を捕えており、サケ・マスの遡上が少ないと、人家の周辺に出没すると聞きました。
クマは冬眠に備えて秋にブナやミズナラ等のどんぐり類を探して盛んに活動しますが、どんぐり類が不作の年は里に下りてきて、カキ・クリの実や農作物を食べ、人的被害も出ることがあります。
去年はブナが豊作であったのですが、今年は凶作だそうで、これまでの統計ではブナの豊作の翌年が凶作の場合、クマの出没件数や被害が増加する傾向があるそうです。
また秋に十分に栄養を蓄えていない雌クマは、きびしい冬をのりこえるため、持っていた受精卵が子宮に着床せず、妊娠しないそうです。
どんぐり類には豊凶があり、特にブナの実は船のマストの形に倣って5年から7年の周期で豊作の周期がありますが、これをマスチングといっています。
なぜ豊凶やマスチングが起きるのでしょう。
どんぐりに限らず天然の状態では植物が花をつけ、実をつけるには、たくさんの栄養・エネルギーが必要です。自身の成長と維持を第一にして光合成をおこなっているわけで、次の世代・子孫をのこすためには、余裕(蓄え)が必要です。何となく日本の少子化みたいですが。
多くの植物は程度に多少はありますが、果実の豊凶に波があります。また自身の蓄えや環境の変化によって、この周期が変わります。
しかしながら一定の地域で同じ周期になります。これは受粉の可能性を高めることにつながるといわれています。
ブナの場合は極端な長期の周期があります。ブナの実はソバグリと言われるほど栄養に富んだ実で、多くの動物の好物です。
ブナは自身の子孫を残すため、豊作の年に動物に食べ残しを出させるほど多くの実をつけ、動物による林床の撹乱や貯食から発芽を促進させることができます。また凶作・不作によって、動物の密度を低下させるのではとの説があります。
大変賢い樹ですね。
小学校の帰り道、大きなマテバシイの木に石を投げて小枝を落とし、美味しいマテバシイを採り、貯蔵したことがあります。 後日に炒って食べようとしたら、中の子葉が固く小さくなって食べられなかったことがあります。そういえばお宮さんの縁日は秋から冬までしか、椎(スダジイ)の実は売っていませんでしたね。
私の経験では、美味しいどんぐりは シバグリ・スダジイは甘みがあり、マテバシイ・ブナ・イチイガシの順でおやつになりますね。
どんぐりは大きい果実で、種子の散布方式では、ころころと落ちる重力式といわれる堅果ですが、乾燥に弱く発芽能力は長くて2年間程度だそうです。
落ちた場所が、たまたま適当な土壌に包まれるような場所では発芽の確率は高いですが、イノシシが林床を荒し、リスやネズミまたカケスなどの動物が食べたり、貯蔵したりして、増やすので動物が散布する種子としての区分が良い、との考えは納得できますね。ここでも動物に食糧を提供し、その代りにどんぐりを運んでもらって発芽の場所を確保しているのですね。
童謡の「どんぐりころころ」です。
どんぐりころころ どんぶりこ お池にはまって さあたいへん
どじょうが出てきて こんにちは ぼっちゃん一緒に遊びましょう
どんぐりころころ よろこんで しばらく一緒に遊んだが
やっぱりお山が恋しいと 泣いては どじょうを困らせた
と少しさびしい終わりですが、後に三番として
どんぐりころころ 泣いてたら なかよし こりすが飛んできて
落ち葉にくるんで おんぶして 急いでお山につれてった
という こどもが安心する歌詞が付け加えられました。
やっぱり 動物散布種子ですね。