アジサイ
梅雨入りしたせいで最近の仕事はレインコートが欠かせません。レインコート着てると蒸れて暑いのですごく汗かいちゃって、けっきょくビショビショになってます。雨か汗かの違いってだけで、濡れることには変わりません。スタッフの正貴です。
街中を走っているとよくアジサイを見かけるようになりました。アジサイを見ると梅雨なんだなって思いますね。カタツムリとか歩いているとなお良し。
前回のヤマボウシの話で予告した通り、今回はアジサイを主として、花のように見える葉っぱについてお話しします。直近のヤマボウシとハナミズキの記事、また昨年にアジサイについて記したスタッフブログがございますので、ぜひそちらもお読みください。
まず基本的な花の造りからおさらいしましょう。花というのは基本的に、「花びら(花弁)」「雄しべ」「雌しべ」「がく」といったパーツから成り立っています。中学校の理科を思い出しますね…中学理科で習った範囲ですと、雌しべの根元に子房とか胚珠とかあるんですけど、そこまで詳しい話は割愛します。
今回の話の中心は「がく」です。がくって何ぞや、という方は、サクラの花なんかをイメージしてみてください。花を裏側から見たときに、花びらを支えるような緑色の葉っぱみたいなのが付いているはずです。あれががくです。
漢字で書くと「萼」と書きます。この漢字、他にも「うてな」という読み方があるのですが、「台」という漢字も「うてな」と読みます。まさにその通りで、「萼」というのは花びら、あるいは花全体を支えるための「台」となっているのです。
話をアジサイに移しましょう。一般的にアジサイの花びらだと思われている部分は、「がく」に当たります。多くの植物では緑色をしている台の部分を、アジサイは上手く利用して花のように見せているというわけです。あまり目立たない本当の花の代わりに宣伝をすることで、虫をおびき寄せて受粉するのですね。
ちなみに、台座である「がく」を進化させているのですから、台座に居座る真ん中が花に当たるのですが…この花、雄しべと雌しべが退化しているため、実を結ぶことが出来ません。本当に虫を引き寄せる宣伝に特化した花なのです。このような花を「装飾花」と呼びます。一方でちゃんと結実することが出来る花を「真花」と呼びます。アジサイの真花は装飾花をかき分けた中にあります。あるいはガクアジサイですと、額縁のように並ぶ装飾花の内側はすべて真花になるので、こちらが見やすいかと思います。
似たようなケースとしては、ウメやアンズなどバラ科の果樹が挙げられます。これらの植物は花を多くつけますが、いくつか雄しべや雌しべが退化している花が混じっています。
さて、一方で以前に紹介した、ヤマボウシとハナミズキはどうでしょうか。これらも以前のお話で「花びらのようなものは、本当は花びらではない」と紹介させていただきました。それでは、この花びらみたいなのも、やっぱり「がく」なのでしょうか。
違います。ヤマボウシとハナミズキの花びらみたいなやつは「苞(ほう)」です。……何がどう違うのか、と言われるとなかなか難しいですが。
「がく」というのはあくまでも「花の一部」です。花を構成するパーツのうち、一番外側にある部分です。「苞」は「葉の仲間」であり、つぼみを守るために葉が変形した部分となります。
あぁなるほど、それで区別がつきますね…とはなりませんね。
僕も区別はつきません。ただ、ヤマボウシには苞が緑色の時期があります。あれは葉が苞に変化する過程で、だんだんと葉緑素が抜けていくのだそうです。一方でアジサイは一部品種を除き緑色にはなりません(もし緑色であれば近くの園芸店へご相談を。「緑化病」の可能性があります)。些細な違いですが、同じような進化でも違う道をたどっているのが面白いですね。
さて、つらつらと難しい話をしていましたが、せっかくなのでアジサイについてもう少し。
昨年のスタッフブログにもありましたが、アジサイは土の酸性度によって色を変化させます。ざっくり言うと酸性だと青、アルカリ性だと赤になります。日本の山林土壌は一般的に弱酸性に偏っているので、野生で見かけるアジサイはほとんどが青色になっています。山で赤いアジサイを見ることはまずありません。
京都の油小路通を走っていると、高架下に植えられているアジサイが赤色になっていました。これは高架下であり雨があまり当たらないこと、周辺をコンクリートに囲まれていること、が理由だと判断できます。
先述の「山林土壌は弱酸性」というのは、雨が弱酸性であることに由来します。弱酸性の雨を受けない高架下の土壌は、酸性にはなりません。またコンクリートからアルカリ成分が溶け出すために土壌はアルカリに偏ります(溶脱と言います)。
近くのアジサイが赤色になっていたら、雨が当たっていないか、コンクリートが近くにないか、少し気にして見てください。もちろん、タマゴの殻なんかを巻いて、土をアルカリ性に矯正していることも考えられますが…。
アジサイ(紫陽花)
【学名】 Hydrangea macrophylla(ホンアジサイ)
アジサイ科 アジサイ属 落葉低木
高さ:1~2m
花言葉:「移り気」「浮気」「無常」
青色:「辛抱強い愛情」 赤色:「元気な女性」 白色:「寛容」
*こちらのスタッフブログ「アジサイの花」もご覧ください。