森と暮らす国、日本と韓国の林業

8月24日(日)に滋賀県犬上郡にある大滝山林組合にて、滋賀県森の技術伝承研究会、一般社団法人kikitoさんが共催された、『お隣なのに意外と知らない韓国の森林』と題された報告会に参加させてもらいました。

6月に韓国で開催されたフォーラムに参加された時の報告ということで、先ずは林材ライターの赤堀楠雄さんから韓国の林業について興味深いお話をたくさん伺いました。
その後のディスカッションでは、日本と韓国、互いに学び得たものをどのように自国での活動に活かしていけるのか…をパネリストの方々がお話され、こちらもまた有意義な内容で、とても勉強になりました。あっという間に2時間が過ぎてしまい、もう少し聞きたかったな、と残念な気持ちになりました。

韓国の山村を訪問されて、その山村の風景が日本の里山とあまりにも似ていたことに驚かれたそうです。
確かに、日本列島と朝鮮半島は対馬海峡を挟んでわずか200kmほどの距離ですし、どちらも温帯モンスーン気候に属し、四季がはっきりしていて降水量も多い、という共通点があります。
約2万年前の氷期には、朝鮮半島と日本(九州・本州)を結ぶ陸橋が存在していたと考えられています。この時期に動植物が両地域を行き来し、共通種や近縁種が定着したのだとしたら、植生が似ていても不思議ではありませんね。

韓国と日本 里山の共通点

帰宅後、両国の里山を「風景」として調べてみると、次のような共通点があるようです。

🔥 薪炭林としてのアカマツやコナラの利用
🏡 斜面に沿った集落配置と石垣のある畑
🌾 棚田と溜池のモザイク的景観
🎎 季節の祭りと祖先崇拝が風景に溶け込む


韓国では山村や農村集落を「마을(マウル)」と呼ぶそうで、これは単なる居住地ではなく、共同体・伝統・自然との共生を含んだ概念だそうです。

一方で、韓国では儒教的価値観が強く、祖先崇拝や墓地の配置が風水に基づくことが多く、それが景観に影響を与えることもあるそうです。
日本では「里山」という言葉が、単なる森林管理を超えて、人と自然の共生空間として語られますが、韓国でも「마을(マウル)」という言葉が、山村の共同体や伝統文化を含んだ意味を持ち、近年では「生態村」や「グリーンツーリズム」といった形で再評価されているそうです。

次に印象的だったのは、韓国における山林治癒(森林セラピー)のお話でした。
日本でも森林セラピーは各地で行われていますが、民間や地域としての取り組みが主体となっています。
それが韓国では、山林治癒の事業を国が後押しして、森の力で心と体を整える取り組みが進んでいるそうです。指導者養成課程を持つ大学もあり、国立の治療施設も整備されているそうです。さらに、山村活性化センターなど、地域の森を活かした暮らしづくりも制度的に支援されているそうです。
その背景にあるものとして、「韓国の接触文化とコロナの影響」をあげておられました。
韓国は「接触文化(スキンシップや対面での交流を重視する社会的傾向)」があるそうです。
それが、コロナ禍で人と人との接触が制限され、心理的な孤立感や不安感を強く引き起こしました。また韓国は競争が激しい社会構造を持ち、ストレスを抱え込みやすい…という状況もあり、人と自然が触れ合える空間としての森林が再評価され、「山林治癒」が非接触型の癒しの場として注目されたそうです。

 

 

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近くて遠い国とも言われる韓国。
どちらも国土の約6割が森林に覆われています。けれど、森との付き合い方、そして「森を見る目」は少しずつ違うようにも感じました。

日本では、昔から「里山」と呼ばれる森が人々の生活のすぐそばにありました。薪を拾い、山菜を摘み、季節を感じる場所。けれど、高度経済成長期以降、林業は衰退し、森は人の手を離れていきました。
最近では、クロモジやアカマツなど地域の植物を活かした商品づくりや、森林セラピーと呼ばれる癒しの取り組みが広がっています。ただ、林業の現場では「木を育て、伐って、使う」ことが中心で、環境分野の人が語る「生態系保全」や「生物多様性」とは、時にすれ違うこともあるように思います。

韓国では「山林治癒」という国家制度があり、森の力で心と体を整える取り組みが進んでいます。専門の指導者がいて、国立の治癒施設も整備されています。さらに、山村活性化センターなど、地域の森を活かした暮らしづくりも制度的に支援されています。
ここでも、林業の人は「資源としての森」を、環境の人は「癒しや保全の場としての森」を見ています。けれど、韓国ではその両者が制度の中で共存しようとする仕組みが整いつつある印象を受けました。

林業の人は「森を使う」ことに責任を持ち、環境の人は「森を守る」ことに使命を感じる… その視点の違いは、対立ではなく、森の多面性を映す鏡なのかもしれません。
日本は、森との文化的なつながりが深く、韓国は制度的な支えがしっかりしています。そして、どちらも、森を未来につなげるために、それぞれの道を歩んでいます。

森はただの資源ではなく、人と人をつなぐ場所でもあります。
韓国の山林治癒、日本の里山再生。
国は違っても、森が人の暮らしに寄り添おうとする姿は似ていますね。
これからの林業は、木を伐るだけではなく、人の記憶と感性を育てる場になるのかもしれません。
森と人との関係がもう一度編み直されるとき、そこには新しい風景が生まれます。
そしてその風景は、きっと誰かの心をそっと癒やしてくれるのではないでしょうか。


最後になりましたが、主催者の皆様、参加者の皆様、
本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

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