クマの報道に思うこと

今年はクマによる人的被害が例年より多く報告されています。京都市でも、観光地である嵐山や太秦、また左京区の岩倉や北区の西賀茂・鷹峯でも目撃情報がありました。
私たちも最近「クマは大丈夫?」とよく聞かれます。幸い、今のところ、まだクマに遭遇したことはありませんが、対策をした上で注意しながら作業を進める毎日です。

SNS上では「クマは駆除すべきだ」という声と、「殺すなんてかわいそう」という意見が対立し、クマと人間の関係が単純な対立構図のように見えてしまうことも少なくありません。

しかし、本来、クマは臆病で人を避ける生き物です。被害に遭わないよう、人の安全は最優先にするべきですが、果たして駆除だけが解決策なのでしょうか?本当にそれで終わるのか、私たちはもう一度考える必要があるのではないかと感じています。

写真提供:photoAC

クマによる人的被害のニュースには心が痛みます。不幸にもお亡くなりになられた方、ご遺族の方、大変なお怪我をされた方々へは心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。

しかし、最近の「恐怖を煽るような報道」には少し違和感があります。
先日の週末、何気なくTVをつけたら、クマの捕獲・駆除現場を生中継していました。
驚いて他のチャンネルも見てみたのですが、少なくとも2局が生中継で罠にかかったクマの映像を流し続けていました。どうしてそんな必要があったのでしょうか?💦 私には理解できませんでした。

生中継でクマが暴れる映像を見せられると、「クマ=とんでもない恐ろしい生き物」というイメージが過剰に植え付けられてしまうように感じました。
まるで「恐怖をエンターテインメント化」した報道のようで、その姿勢には疑問しかありませんでした💦

クマは確かに怖いですが、TVが描くような「無差別に人を襲いに来る怪物」でしょうか?
一番怖いのは、報道にどんどん煽られて、「感情的な駆除圧力」がどんどん強くなってくることではないでしょうか?
実際、今週もクマの目撃情報、被害情報は続いていますが、例えばSNSでのコメント欄をみると、駆除圧力は強くなっているように思います。

人的被害が出ている以上、駆除もやむを得ないことであるのは十分理解していますし、「かわいそうだから…」という理由で「命を大切に」などと軽々しく言うつもりはありません。

それでも、「怖い」「怖い」と煽り続けることで、問題の本質からどんどん離れていってしまっているように思えてなりません。

写真提供:photoAC

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クマが自然界に存在することは、生態系のバランスを保つうえで重要な意味があります。

クマはアンブレラ種なので、「クマを守る」ことは「日本の里山全体を守る」ことに繋がるのです。
⦅アンブレラ種・・・傘(アンブレラ)になる生き物のこと。この生き物を守るために広いエリアや豊かな環境を保護すると、その「傘の下」にいる他のたくさんの生き物も一緒に守れる、という種のこと。⦆

具体的には、クマは…

  • 「広い行動範囲(数十~数百㎢)」が必要
  • ドングリがたくさん実る「豊かな広葉樹林」がないと生きられない
  • 冬眠できる静かな奥山も必要  とする生き物です。 

なので、「クマがちゃんと暮らせる環境」を守ろうとすると、必然的に広い森・里山・川まで全部保護することになります。
クマを守ることで、その傘の下で生きる山鳥、テン、モモンガ、イイズナなどの小型哺乳類が守られ、各種キノコ・山菜・野草、希少な昆虫や両生類、さらには土砂崩れ防止や水源かん養機能までもが守られることになるわけです。
つまりクマは「森の健康バロメーター」であり、同時に「森全体を守る傘」なのです。

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例えば… 餌が少ないため、人里に降りてくるのなら、森の奥にヘリコプターやドローンで餌を置いてはいけないのだろうか?素人ながらにそんなことを考えてみました。

調べてみると、「森の奥に餌をまく(補飼)」は、昔から何度も提案されていて、一部では実際に試されているそうです。
しかしながら、ただ「餌をまくだけ」では、逆効果になることも多く、賢くやる必要があるそうです。

大事なポイントとしては、

  1. 人里から最低5~10km以上離れた「奥山」限定で撒く
    (近すぎると「餌=人間の近くにある」と学習してしまう)
  2. ドングリ・クリ・ブナの実など”自然の餌”に近いものを使う
    (甘い果実やトウモロコシは依存させやすく、逆に里に引き寄せる)
  3. 一時的・集中型にする(秋の2~3ヶ月だけ大量に)
    (年中やるとクマが自分で餌を探さなくなる)
  4. 同時に里の餌(ゴミ・果樹園)を徹底排除
    (これをやらないと意味がなくなる)

秋田・岩手の一部地域ではこのポイントをしっかり守り、ヘリで数百kgのドングリを山奥に運んで、クマが「わざわざ里に来なくてもお腹いっぱい食べられる」状態を作ってあげ、クマの出没を40~65%減らしたそうです。

こういう事を報道してくれればいいのになぁ…とつくづく思います。
これなら、「ただの餌やり」ではなく、「人間が荒らした森を人間が少しでも元に戻す」ってことにも繋がるだろうし、子どもたちにも「クマは敵じゃない、森を豊かにすれば帰ってくれる」という教育にもなると思うからです。

報道で煽り続けても何も問題は解決しない。
「駆除派」と「保護派」の対立を深めるだけです。
問題点は何か…。クマの餌(ドングリ)が凶作になってしまったのはなぜなのか。クマの住処が奪われ、人里に下りてこなければいけなくなったのはなぜなのか。
そういうことを報道してほしいな…と思います。

森の木をバンバン伐採して、ソーラーパネルを敷き詰めてる場合ではないですよね😭
ソーラーパネルの乱立を止め、放置林を豊かな森に再生していくことが、時間はかかるかもしれないけれど、クマと共生する一番現実的で一番効果が出る方法であると私は思っています。

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