多様な樹木

1 <日本の樹木>

樹木はその環境に応じて様々な生活のスタイルをもっています。
今回は
その環境についてマクロの面から気候を基本として考えてみましょう。

(日本の雨と雪)

日本列島は位置としてはユーラシア大陸の東部にあり、日本海と太平洋などの海にかこまれています。そのため夏は太平洋側からの梅雨前線や台風、冬は日本海からの季節風とともに、多量の雨、雪がもたらせられます。
年間雨量は1,700mmと世界平均の2倍といわれています。

植物にとって、日本の気候は雨(水分)に恵まれており、
日本列島は、高山の一部を除いて、本来樹木におおわれた美しい緑の島であると言えます。

(日本の気温)

水平的には、緯度で北緯45度から23度までに位置し、垂直的には海抜から高山まであり、平均気温も3℃から23℃と温度の違いがおおきく、緑の様相は変化に富んだものです。

(日本の気候帯と海流)

 雨量と気温で決まる気候帯としては、北は北海道の亜寒帯(あかんたい)、東北から中部山地の冷温帯(れいおんたい)、関東から西日本までの暖温帯(だんおんたい)、次に沖縄までの亜熱帯(あねったい)があります。またこの気候帯に影響を与える暖流として、南から日本海に流れる対馬海流(つしまかいりゅう)、太平洋側を流れる日本海流(にほんかいりゅう)があり、多様で複雑な植物の分布を見ることができます。

植物の分布を決定するものは、気候と同様に、どのような種類の植物が生き残ってきたか、どのように地形や土壌がつくられてきたか、また人間の生活による森林の改変はどうであったかが大きな因子です。
特に日本の森林の40%が人工林となった現在では、気候帯に応じた本来の森林の分布はなかなか分かりづらいのですが、ここでは代表的な天然生の森林について、見てみましょう。 

 2 <針葉樹と広葉樹>

日本の気候帯に対応する森林には針葉樹と広葉樹、また落葉性と常緑性などの様々な組み合わせの森林があり、また明確な区切りではなく連続する森林のタイプです。ふつう森林を表すときは優先する高木の構成であらわします。

「亜寒帯」となる北海道の山地で見られるのは、アカエゾマツ・エゾマツやアオモリトドマツ・トドマツなどの針葉樹とわずかな落葉広葉樹のダケカンバなど構成される森林で、亜寒帯針葉樹林ともよばれます。

北海道の平地部は亜寒帯針葉樹のエゾマツやトドマツとともに冷温帯の落葉広葉樹のミズナラ・シナノキ・ウダイカンバ・カツラ・ヤチダモなどが混交した北方針広混交林とよばれる森林があります。

東北から中部地方の「冷温帯」では落葉広葉樹の代表であるブナ・ミズナラやカエデ類が主な構成樹種ですが、常緑の針葉樹のスギやヒノキ・ヒバまたモミ等がみられ、内陸部の乾燥する山岳地では落葉針葉樹のカラマツがみられます。

ブナ林

関東から西日本までの「暖温帯」では常緑の広葉樹であるカシ類やシイ類また クスノキ・タブノキなどの照葉樹林(しょうようじゅりん)とも呼ばれる森林が本来ですが、古くから人の生活の影響を受けたため、アカマツ・コナラ・クヌギなどの森林がひろく占めます。山地などではモミ・ツガなどの常緑針葉樹やクリ・ミズナラなどの落葉広葉樹があり、天然生の針広混交林も一部みられます。

マングローブ

マングローブ

つぎに沖縄周辺の「亜熱帯林」では、スダジイ・ウバメガシなどのカシ・シイ類に加えアコウ・ガジュマルなどの気根が発達したイチジク類の常緑広葉樹があり、海岸や河口ではヒルギ類が構成するマングローブ林がみられます。

まとめてみますと、高緯度では常緑針葉樹、中緯度では落葉広葉樹、低緯度では、常緑広葉樹となりますが、それぞれオーバーラップしていますね。これに山地の標高を考えるとより多様な森林を見ることができます。

森林学習館さまからお借りしました。http://www.shinrin-ringyou.com/

日本は強い氷河期を経験しなかったため、世界規模でみると植物の種類が多く、多様な森林に恵まれています。

3 <京都府の森林>

では京都府の森林についてはどうでしょうか。

京都府は大きくは暖温帯に属しますが、北は丹後から南は南山城まで長く、

北部の丹後・舞鶴地域は日本海気候です。冬は多雪ですが南からの対馬暖流で山城地域(京都盆地)に比べ最低気温が高く比較的温暖です。ここでは、カシ類やシイ類とともにタブノキ・カゴノキなどのクスノキの仲間も海岸に近いところでみることができます。

また山城から南部は瀬戸内海気候の影響を受け、温暖で降水量が比較的少なく冬は乾燥します。典型的な森林として、人為の影響を強く受けたアカマツやコナラの森林ですが、松くい虫の被害により本来のカシ類やシイ類などの常緑樹が優勢になりつつあります。またこれらの森林には耐陰性の強いソヨゴ・サカキ・ヒサカキ・モチノキ・ヤブツバキ・ヒイラギなどがみられます。さらに南部にはタブノキ・カゴノキ・イヌガシなどのクスノキの仲間が人為をまぬがれて残っています。

京都府には高い山はありませんが、北部や東部の標高の高い地域は冷温帯の気候帯でみられる天然生の森林があります。ここではスギ・アスナロ・ヒノキなどと共にモミ・ツガの針葉樹林やブナ・ミズナラ・トチ・シデ類の落葉広葉樹林がみられます。

このように京都府は日本の樹木の亜寒帯と亜熱帯を除く様々な森林がみられるところで、500種ほどの樹木がみられます。ちなみに日本の樹木の種類の数は、栽培種も含んで、約1300種と言われています。

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