いちじく ~2つの共生①
イチジクの美味しい季節になりましたね。
イチジクは丈夫で果実の生育期間、つまり利用期間が長く、日本では露地で6月から10月まで食べることができます。また乾燥して保存できるため、世界中で栽培されます。
栽培も挿し木で容易に増やすことができます。
私たちが食べているイチジクは1万年前の地中海のレバノンの化石に起源を求めることができ、世界に広がった栽培果物で、日本にはペルシャ、中国を経て江戸時代に日本に伝わったそうです。
日本で栽培されるイチジクは雌の株ですが、受粉しなくても「果嚢(かのう)」が大きくなり、美味しい果実ができます。
これは受粉をせずに果実をつける「単為結果(たんいけっか)」といいますが、自然の状態では、非常に珍しいことです。
単為結果の栽培品種にはバナナ、キュウリ、西瓜、ぶどうなどがあります。
最近ではトマトも花粉を運ぶマルハナバチに頼らないで実をつける品種が多く作られるようになりました。
イチジクは漢字(無花果)のとおり花が見えません。花が花序の袋に包まれて(果嚢という)内側に花がつきます。 しかし、よくよくイチジクの果実を割って観察すると、つぶつぶで先が膨れた花が見えます。 とがった実はクワの実に似ていますね。
イチジクはクワ科の植物です。
クワ科にはクワ属とイチジク属があります。
クワ属は落葉することで寒い温帯に適応し、紙の原料のコウゾや蚕を育てるクワとして、生育範囲を広げて来ました。
イチジクの仲間は熱帯に多く、つる性になることで他の木に巻きつき、熱帯の光の争奪に勝とうとします。通年で実をつけるため、熱帯のサルや鳥などの動物の大切な食物となっています。
またこのことによって、イチジクは広く種を散布することができます。
これが樹木と動物の一つ目の共生の形です。