優等生の木

ヒノキは、美しく耐久性をもった高級な木として知られています。

京都の町屋でも中心を持った「心(しん)もち」の柱が良く使われ、
その上品でやさしい肌触りから、住む人だけでなく、大工さんや木工家からも刃当たりが良く、木材の持つ長所をすべて持つ最高の木材とされています。
建築用材としては勿論、家具や彫刻から弁当箱の曲げわっぱ・毎日の俎板(まないた)まで広く使われています。

法隆寺2特に知られているのはその「耐久性」で、1300年以上前に建てられた世界最古の木造建築である法隆寺にヒノキが多く使われていることからもわかります。

また驚くことに圧縮の強度が切られてから徐々に増し、200年で最大となり、その後1000年で切った時の強度になるといわれています。

花背・広河原から久多の痩せた明るい山には天然のアカマツやスギに交じって天然生のヒノキを見ることができます。

特に久多では天然生のヒノキは年輪の詰まりと材の赤みが美しく、材木屋さんがヒノキといえば久多と呼ばれるほどの時期があり、高価であったため多くが切られました。今では植栽されたヒノキが大半ですが百年後のヒノキはどうでしょうか。

学生の頃、自然力を最大に生かした天然(てんねん)更新(こうしん)に興味をもって、木曽ヒノキの調査に行ったことがあります。王滝村の営林署を拠点にして調査地の稚樹の成長を記録することだったのですが、ポドソルの土壌とササの影響で非常に遅い成長で10cmの苗に5年間、50cmの苗になるのに10年以上かかっていて、これでは民間では出来ない林業だと思いました。その後京都の近所の山で1mぐらいの細い苗を山採りし、庭に植えてみましたが最初の3年は根の張りができなかったのかほとんど大きくなりませんでした。やはり、数百年以上の計画が必要な木ですね。

ヒノキ床板

 

スギは成長が早く、建築材の他に、昔は農機具から箸・桶等の日用品まで、様々な用途に使われる木です。

日本の気候によく合った樹木ですから、日本では一番多く植えられています。

ヒノキと比べて強度や耐久性が劣るため、現在はヒノキのほうが、高く評価されますが、木材が本来持っている長所から比較してみますと、そうとも言えません。

体積当たりの強度はヒノキはスギに比べて15%から20%強度が高いようです。
しかしながら、スギは体積あたり20%軽いので、重量当たりの強度は0から10%とスギにくらべてヒノキが格段に強いとはなりません。
つまり、よく使われるヒノキの10.5㎝角の柱よりもスギの12cm角のほうが強いことになります。

また、経年変化による強度の増加は先に述べたようにヒノキは増加します。
スギは残念ながら詳しいデータはありませんが、私の少ない経験からは、ヒノキよりも早く強くなるのではと思います。
スギは釘打ちは楽なのですが、40年たって釘を抜くときはヒノキと同等の力が必要となります。

またシロアリに対する耐性ですが、ヒノキのほうが、一般に強いようです。シロアリは湿度を保った木材が好きですから、吸水性が高いスギは床下やお風呂・台所など湿度が高い環境ではやはり、ヒノキより劣るようです。しかしながら、スギの心材でかつ脂分が多い材(飫肥スギなど)はかなり耐性をもっています。

逆に、軽くて吸水性が高いスギの特性は、室内の湿度の調整にすぐれ、熱の伝わり方が遅く、ヒノキに比べ肌触りが暖かいと言われます。
床板にスギとヒノキを張って比べると、このことがよくわかります。ただしスギは傷が付きやすいので、肌触りか強度のどちらを優先させるかですが。

スギ床板

日本の山からスギやヒノキが供給される今、まさに汎用性の高い優等生のヒノキもスギもそれぞれの特性を考えて利用することが大切です。

建築の費用に占める木材の価格は木造で10%から15%と言われますが、できるだけ国産の材木を、それも無垢の木をたくさん使うことが重要だと思います。

高温多湿の気候のなかで、木材の節や傷や反りの欠点を補い、肌触りの良い、快適な住環境には厚い・太い無垢の木材を使うことです。

木に触れ、優しい環境で生活することは、「自然と一体」となることを宗とする日本人の文化を豊かに保っていくことと地球温暖化対策への一番の早道かと思うのですが。

スギ林

スギ林

 

*「心材・辺材」

 樹木は年々成長し大きくなりますが、木口面を見ると中心部の色と周辺部の色に違いが出てきます。中心部の濃い色の部分を心材(赤身(あかみ))、周辺の白い部分を辺材(白(しら)太(た))と呼びます。

一般に心材は種々の成分が沈積して水分が少なく、辺材はデンプン質と水分が多く当然、心材が辺材にくらべ耐久性に優れていることになります。

*「天然(てんねん)更新(こうしん)」

苗を植えないで、天然に芽生えた苗や枝を育てる育林の方法で、マツやスギ・ヒノキの仲間やナラ・カシなどのブナの仲間で行われる。

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