花粉の運び屋と泥棒
今日の樹木ノートもスタッフの花音が担当させていただきます。
つい先日、サクラの開花宣言が出たと思っていたら、あっという間に満開になりました。
例年、サクラの周りは花見を楽しむ人たちで賑わいますが、今年はどうでしょうか。
一口にサクラと言ってもその種類は多く、栽培種を含めると600種類以上にもなり、その数からも日本人とサクラの馴染み深さがうかがえます。
サクラの木を見ているとメジロが花を啄んでいるのを発見しました。
初めは花についた虫を食べていると思っていたのですが、どうやら違うみたいです。
調べてみると、虫を啄んでいたのではなく、花の蜜を吸っていたようです。
メジロは雑食ですが、虫よりも特に花の蜜を好む鳥で、そういった動物のことを蜜食動物(みつしょくどうぶつ)又は花蜜食動物(かみつしょくどうぶつ)といいます。さらに、花の蜜を吸うことで花粉を運び、受粉を助ける動物を送粉者(そうふんしゃ)と呼びます。
ヒヨドリが留まっていたので観察していると、そこにメジロが飛んできて、同じ木に留まりました。
そうしたら、ヒヨドリがメジロを威嚇しだしました。
ヒヨドリもメジロと同じく、その長い嘴(くちばし)で蜜を吸う蜜食動物です。
同じ送粉者なのだから、仲良く分け合えばいいのにと思い、ヒヨドリの独占力に呆然としてしまいました。
密食動物には、受粉を助ける送粉者以外に、受粉に関与せずに蜜だけを奪っていく者もいます。それを盗蜜者(とうみつしゃ)といい、蜜食動物の多くの種は盗蜜者だそうです。
自分は蜜食動物の全てが送粉者だと思っていたので、盗蜜者の存在と盗蜜者の種類の方が多いという事実に驚きを隠せませんでした。
例えば、スズメはメジロやヒナドリと同じ蜜食動物です。ですが、嘴が太く短いため、サクラの蜜をうまく吸えません。そのため、スズメは花の根元を嘴でちぎり取って蜜を吸います。その時、花粉が嘴につかず他の花に対しても送粉されないのでスズメはサクラに対して盗蜜者となります。
サクラの蜜を吸う姿は、花を持っているみたいで可愛らしいのですが、サクラからしたら迷惑なことです。
サクラの木のそばを歩いていると、時々サクラの花が根元から落ちているのを見かけることがあり、自分はそれを人が引きちぎったからだと怒りすら覚えていました。
ですが、盗蜜者のことを調べていくうちに、それはスズメが蜜を吸うために引きちぎった花だった可能性もあったことに気づきました。
今回の観察を通して、自分は今までの経験から「こうである」と決めつけてしまっていることがあるのを痛感しました。
今後は他の色んな可能性も考慮しつつ、もっと広い視野で物事をとらえていきたいと思います。
ヤマザクラ(山桜) 【別名】シロヤマザクラ
【学名】 Prunus jamasakura
バラ科 サクラ属 落葉高木
高さ:10~25m
花言葉:「あなたに微笑む」「純潔」「淡泊」