植物の赤い若葉
お久しぶりです、スタッフの正貴です。ブログを更新できないままに年が明け、年度まで変わってしまいました。投稿間隔が大きく開きましたこと、大変申し訳ありません。
私事のご報告ですが、昨年12月1日に樹木医の資格を取得いたしました。
樹木医というのは字の通り樹木のお医者さんで、病気や虫などに侵されている樹、キノコが生えて空洞ができている樹など、様々な樹の診断・治療を行う人のことです。もし身近な樹について困りごとがありましたらぜひご相談ください。
樹木医の使命のひとつとして、樹木に関する知識の普及・指導を行う、というものがあります。
これからも当ブログでは樹木に関する様々な話をしていこうと考えておりますので、どうかお付き合いください。
さて、サクラの花も街中ではすっかり満開の時期を過ぎ、葉桜へと変わりつつあります。今回はそんな生えてきた葉、新芽に焦点を当てていきたいと思います。
植物は冬が終わり暖かくなると、光合成のために新しい葉を開いていきます。これは常緑樹でも同じで、同じような緑色の樹の中に淡い色彩の葉を見ることができます。写真はカシとキンモクセイのものです。カシは赤茶色の葉、キンモクセイは遠目には金色に似た鮮やかな葉を展開しています。
以前に紹介した植物に、アカメガシワという植物がありました。
アカメガシワ
こちらは新芽が赤いためにアカメガシワという名前が付いたのですが、実は新芽が赤い植物というのは数多く存在します。
写真にあったシラカシも赤っぽかったですし、よく植木として用いられるカナメモチ(アカメモチ)は燃えるように真っ赤な新葉を展開します。
なぜ植物は、新しく展開する葉を緑ではなく赤い色にするのでしょうか。
赤い葉の理由としては諸説あります。主に挙げられているのは、
①強い光から若い葉を守っている
②害虫から若い葉を守っている という二つでしょうか。
新しく葉を展開するのも、光合成のための葉緑体を作るのも、大量のエネルギーが必要になります。省エネモードで冬を乗り切った植物にとって、何度も葉を展開するほどのエネルギーは残されていません。そのため、いかに柔らかく弱い葉を虫や光から守るのか…ということが課題になってきます。
葉が赤い色に見えるのはアントシアンという色素が関係しており、植物の中では一般的にアントシアニンと呼ばれる形で存在しています。
アントシアニンは抗菌作用、抗酸化作用を示し、防御物質として新葉を守ってくれます。さらに葉緑体の発達を促進し、紫外線を吸収することで発達中の葉緑体を保護する働きを持っています。効率よく葉緑体を作り出す働きを備えている、というわけです。
虫の観点から見ても、赤い色は虫からは見えにくい色で、虫の天敵である鳥からは目立つ色になっており、虫の被害から守るために最適な色と言えるでしょう。さらにアントシアニンにはそもそも虫の幼虫を近づけないような忌避物質としての作用もあるため、まさに新葉を守るのにうってつけ、というわけです。
このような様々な働きを備えたスーパー物質、アントシアニンのおかげで新葉は守られています。植物はこうした物質を巧みに利用することで、生き残るための戦略を立てているのですね。
途中に名前を挙げたカナメモチですが、植木として本当に多く用いられているので、皆さん目にしたことがあるかと思います。ですが他の植物の新芽が赤から緑になったあとも、このカナメモチは長い時間を赤いままで過ごしているように感じます。実はこの植木に使われるカナメモチ、園芸用のレッドロビンという品種になります。
次回は、このカナメモチについてお話できれば、と思います。