イチョウ

スタッフの正貴です。すっかり朝晩は冷え込むようになりましたね。寒さのおかげで街路樹の多くも紅葉しており、景色に秋を感じるようになりました。気温的にはもう冬じゃないのかと錯覚する日もありますが…。

さて、今日はイチョウについてお話します。とはいってもイチョウは身近な木であるため、当ブログでもたびたび扱われています。以前の記事については以下をご覧ください。

誕生日の木 11月16日

種はだれがつくるのか① ~イチョウの話

上記記事でも触れられていますが、イチョウというのはかなり特殊な樹木です。針葉樹でもなく、広葉樹でもない。図鑑によってはイチョウだけ単独のくくりをされていることも珍しくありません。なぜイチョウだけが他の樹木と区別されるのかというと、これはイチョウがはるか昔から存在していたから、ということが挙げられます。

かつてイチョウには似たような仲間がたくさん存在しており、はじめのイチョウが出現したのは2億5000万年前と言われています。これがどのくらい昔かというと、恐竜の出現時期がちょうど同じ2億5000万年前だそうです。イチョウと恐竜は同級生、と言えるかも知れませんね。ですがイチョウの仲間たちはこれまた恐竜と同じく、約6500万年前、氷河期の到来によって絶滅してしまいました。その中で唯一生き残ったのが、今も身近にあるイチョウなんだそうです。

つまりイチョウは6500万年前から姿をほとんど変えず、現代まで生き残っているのです。他の植物は次々と変化している中で、イチョウはずっとそのままで存在している…これが、イチョウが他の植物とは区別されている理由になります。


では、なぜ何千万年もの間、イチョウがそのままで存在していられたのか。それはイチョウの持つ、高い耐久性のために他なりません。

イチョウは成長が早く、暑さや寒さにもよく耐え、乾燥や大気汚染などにも強く、さらに虫や病気にも強い…さらに言えば黄葉により季節の移ろいを楽しめ、火災の際には延焼を防ぐ防火性があり、剪定などの傷の治りも早い。そうです、イチョウは街路樹として最高とも言える素質を持っているのです。そのために街路樹として植えられている本数もトップであり、中国原産にもかかわらず、日本人に身近な植物となったわけです。あるいは人間に寄り添い育ててもらうことも、イチョウのしたたかな生存戦略なのかも知れませんね。

先に挙げた当ブログの記事にて、銀杏のなるイチョウとならないイチョウ…イチョウの雌雄の見分け方について触れているものがあります。そこでは「外観からはわからない」と記載されているのですが、完璧な精度を求めなければ、実はわりとわかります。メスのイチョウは銀杏をつけるので、枝が重くなります。そのため、メスのイチョウは枝の角度が水平、あるいはやや下向きになるのです。対してオスのイチョウの枝は斜め上に伸びており、全体にパリっとした樹形になっています。

大きい樹ではだいたい判定できるのですが、まだ銀杏をつけない若い樹や、何度も剪定を繰り返されたものは成功率が下がります。何度も枝を切られると、新しい枝は上を向いて生えてくるため、オスもメスも同じような樹形になるためです。

最後はイチョウの学名について触れたいと思います。イチョウは学名をGinkgo biloba と言います。このGinkgoというのはイチョウの漢字表記に由来しており、銀杏→ギンキョウ→Ginkgo というわけです。

……おかしいですよね。ギンキョウをローマ字で書こうとすると、「Ginkyo」となるはずです。なぜ「y」ではなく「g」なのか?

学名というものにはルールが厳しく設定されています。ラテン語を用いること、属名+種小名で表すこと、はじめの文字は大文字にすること、などなど。それらルールのひとつに、一度つけた学名は修正不可能、というものがあります。仮に申請の際に書き間違い、スペルミスをしていたとしても、それは修正できない、というものです。

そう、GinkgoというのはGinkyoと書こうとして間違ってしまったものなのです。おかげでなんと読めばいいのかよくわからない単語になってしまいました…。余談ですが、イチョウの葉から抽出される成分はギンコライドとかギンゴライドとか呼ばれます。漢方としてはギンコウと呼ばれ、とある先生はギンゴーと発音されていました。ギンコーかギンゴーか、どっちでもいいのかも知れません。

申請にミスがあったために正しい読み方をされなくなったイチョウ。しかし、はるか昔から世界に存在していたイチョウにとって、人間からの呼び方や区分の方法など、些末なことなのかも知れませんね。

イチョウ(銀杏、公孫樹、鴨脚樹)

【学名】 Ginkgo biloba

イチョウ科 イチョウ属 落葉高木

高さ:20~30m

花言葉:「長寿」「荘厳」「鎮魂」

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